徹夜明けの僕が語るよ「日本で二番目に早いノーベル化学賞2009解説」その1
普段は写真のことしか書いてないけど,たまには研究の話でも.
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せっかく自分の専攻分野からのノーベル化学賞なので,3人+1人の業績を簡単に説明してみようと思う.ちなみに僕は半人前の構造生物学者だが,リボソームの研究者ではないので要注意.
今回のノーベル化学賞は "for studies of the structure and function of the ribosome - リボソームの構造と機能に関する研究に対して".細胞内タンパク質合成装置であるリボソームの微細な立体構造の決定し,どうやってタンパク質が作られるか,その詳細を明らかにした研究が対象となった.この研究を主導した3人の構造生物学者――結晶化を先駆的に進めたYonath,50Sを構造決定したSteitz,70Sを決定したRamakrishnan――が化学賞を受賞.Steitzによる50S,Yonathによる30Sの構造決定はともに2000年,Ramakrishnanによる全体構造の決定は2006年.もうリボソームにノーベル賞が出たか…,って感じ.

50Sリボソームの構造(PDBID: 2J00)
彼らの研究は1. 遺伝情報からタンパク質が作られるという,生物にとって基礎中の基礎と言える生化学ステップの詳細なメカニズムを解明した,2. 生体高分子の立体構造解析研究(構造生物学)としてのインパクトが多大だった,3. 細菌感染症に対する新規抗生物質の開発という応用的意義が大きい,という3つの点が高く評価された.
ここでは,受賞した3人と惜しくも受賞を逃した1人の研究について紹介することで,構造生物学研究で最もエポックメイキングな研究でもある「リボソームの構造解析」について解説する.
まずは前提知識から.
■遺伝情報の流れ
DNAに刻まれた遺伝情報はDNA→RNA→タンパク質へと変換され,機能する.生命の設計図=DNAに書かれているのは,実は細胞の中で働くタンパク質の作り方.まずDNAの情報は,mRNAというコピーに「転写」される.mRNAはA, U, G, Cの4文字で書かれている.さらにmRNAからタンパク質へと遺伝情報は「翻訳」される.この翻訳を担うのがリボソーム.DNA,RNA,タンパク質は全て,カセットテープのように情報が一列に並んでいる(一次元的な情報媒体).
■タンパク質
生命現象のメインプレイヤー.例えば,赤血球に含まれるヘモグロビンやパイナップルに含まれ肉をやわらかくする酵素パパインは,どちらもタンパク質.細胞の骨組みも,細胞内で起こる生化学反応も,ありとあらゆる生命現象はタンパク質の働きによって担われている.
タンパク質は,20種類のアミノ酸(例外あり)が順番に,1本の紐のように数珠つなぎになってできている.この紐(ポリペプチドと呼ばれる)が適切な形に折り畳まることで,タンパク質として機能を発揮する.アミノ酸の並び方によって,タンパク質の構造と機能は決まる.ヒトにはざっと10万種類くらいのタンパク質が存在する.
■リボソーム
細胞内にあるタンパク質合成装置のこと.mRNAというテープの情報を読み取り,書かれている順番通りにアミノ酸をつなげることでタンパク質を作り出す.このステップは翻訳と呼ばれる.
リボソーム自身も,RNAとタンパク質という2種類の生体高分子からできた核酸-タンパク質複合体.直径は約200 nm,分子量260万.細胞内に存在する複合体としてはかなり巨大で,普通のタンパク質の100倍(分子量比)くらい.リボソームは細菌タイプと真核生物タイプの2種類がある.今回の研究は全て細菌タイプのリボソームについて行われた.細菌リボソームは大きく分けると,50Sリボソームと30Sリボソームという2つのブロックが組み合わさっている.リボソーム全体のことは70Sリボソームと呼ばれる.50S + 30S = 70Sという不思議な足し算だが,この理由を知りたい人は「沈降係数」を調べてほしい(ここでは割愛).
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